仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
……こんなところ、誰かに見られたら困るのに。

そんな思いとは正反対に、きゅんと高鳴る胸。彼の情欲の浮かぶ視線に、身体がじわじわと熱を帯び始めた。

「慧さん、離して……」

「そのお願いは聞けそうにないな」

慧さんは、私の唇にしーっと指を押し当てて、私の願いを制した。

ここ、廊下だよ? いつスタッフの方や、パーティー会場から出る方がいるかわからないのに。

うっすらと涙が浮かぶ瞳で、彼を止めるように見上げる。
しかし慧さんは私の考えとは真逆に、琥珀色の双眸をとろけさせた。

「今、君がどんな顔してるかわかる? ……困惑と羞恥で、耳まで真っ赤だ。その顔がたまらなく可愛いんだよね、君は」

顔を逸らして慧さんの視線から逃げようとすれば、強引に唇を塞がれる。
舌先で唇を開けられ、柔らかな舌が押し込まれた。

「んん……っ」

激しく求めるようなキスに、背徳感や緊張感がごちゃ混ぜになって、身体が甘く疼きだす。

「いっぱい、しないで……っ」

視界が溶けるように揺れる。困惑と羞恥心で、睫毛がふるりと震えた。

「そんなに煽らないでよ。めちゃくちゃにしたくなる」

彼は誰もが陥落してしまうような官能的な美しさを伴いながら、ゆっくりと甘く低い声音で囁く。
舐めるような囁きに、耳朶がゾクゾクとした。

「もう帰る? 挨拶も済んだし――何より、僕が我慢できそうにないんだ」

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