仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
勿論それ相応のお値段になる。
小野寺さんと見積もり表を見ながら、私は内心「凄く高い!」とその料金に悲鳴をあげる。

けれど小野寺さんはその費用を妥当だと理解しているのか、驚いた様子もなく見積もり表を楽しそうに見ていた。


「なんだか不思議な気分になるな。仕事と言えど、琴石とブライダルサロンでこうして並んで座るなんて」

小野寺さんは眉を寄せ、困ったような顔をして私の髪を自然な手つきで撫でた。

その表情と仕草に思わずどきりとする。

……演技、だよね?

小野寺さんの瞳の奥を窺うように、私はそろりと彼を見つめ返した――その時。



「撮影、一旦中断して」



ディレクターさんではない男性の声が上がった。
声のした方へ顔を向ける。

そこには『エテルニタ』の代表取締役社長――常盤慧さんが、私を冷めたような目で眺めながら立っていた。


亜麻色の髪にブリティッシュスタイルのスリーピーススーツ。華やかなゴールドのアスコットタイ。長い足の先には、磨き上げられたロングノーズの革靴。

王子様のような甘い美貌は今日も健在だ。
けれどその顔は、なぜだか不愉快そうに歪んでいる。
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