仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
長身の彼が壁際に背をもたれかけ腕を組んで不機嫌そうにしている様子は、素晴らしく絵になっていた。

私はそんな常盤社長に目を奪われる。
それからハッと弾かれたように慌てて椅子から立ち上がると、その場で腰を折って頭を下げる。

「おはようございます! 先日は本当にありがとうございました」

「おはよう、琴石さん」

常盤社長は目を細めるようにして微笑むと、形の良い口角をきゅっと上げた。

「撮影を見ていたけど――」

優しげな声音と琥珀色の瞳が蕩けるような美しい微笑み。
私は、常盤社長に褒めてもらえるっ! と期待感でいっぱいになる。

しかし、次の瞬間。

まるで琴石結衣というモデルに興味を失ったかのように、彼の眼の奥は笑っていなかった。


「君の表情、僕は良いとは思えない。僕のイメージする『エテルニタ』の花嫁とは全然違うんだよね。“幸せそう”なエネルギーが感じられないっていうか」

常盤社長の一声に現場の緊張感が一気に張り詰める。

冷めきった声音と視線に、私は頭から冷たい水を被ったような気持ちになった。

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