仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
「はあぁ……」

冷たい水で手を洗いながら溜め息を吐く。

広い鏡に映る自分を見れば、幸福感なんてごっそり抜け落ちてしまった青白い顔が映っている。



『ウェディングに対する期待や不安、喜びや気恥ずかしさをもっと愛情深く表現できないの? 今の君にはまったく感動できない』

『君の実力ってその程度? なんだか、がっかりしたよ』

脳裏に、常盤社長の冷めきった声が蘇った。



褒めてもらえるかもなんて期待した自分が恥ずかしい。


鏡を眺めながら、隣に並ぶ新郎役の小野寺さんをイメージし、感情を乗せて笑顔を浮かべてみる。

確かに、常盤社長の言う通り。私の表情や体や纏う雰囲気からは、愛情深い“幸せそう”なエネルギーは全く滲み出ていない。

恋愛未経験の私には、恋人同士の間に流れる“愛情”という感情への理解が圧倒的に足りていないんだ。

ブライダルの撮影で一番大切で必要なものが欠けているなんて。

常盤社長にああ言われても仕方ないよね……。

 
反省と自己分析をしながら、お手洗いを出て廊下を歩く。
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