愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~
大涌谷に着く頃には視界は大地から吹き上げる煙で真っ白だった。
強風で煽られた煙の中から飛び出し、ロープウェーを途中下車。

大涌谷は箱根山の噴火跡地で、剥きだしの岩肌から硫化水素の白煙が立ち上る観光地だ。火山活動が活発なので散策用のコースはすべて立ち入り制限になっているけれど、有名な黒玉子やお土産物屋さんはやっているし、何より岩肌の絶景は見ごたえがある。

しかし、今日は本当に日が悪かった。
風が強すぎる!

あと少し強風になったらロープウェーが止まるというアナウンスの中、せっかく来たのだしと外に出てみて、一瞬にして後悔した。
寒い!!息ができないくらい風がすごい!!

でもでも!写真撮りたいし、お土産買いたい!
徳島先輩と千夏ちゃんには箱根に行くって言っちゃったから、黒玉子食べてる写真くらい送りたい!

息を止めて、びゅうびゅうの強風に吹かれながら歩きだす私は、わずか数歩で風に煽られ、勧めなくなった。
そんなに体重軽くないのになぁ。進めないよ~。
もう目も空けていられない。その場で立っているのが精一杯だ。
すると、私の背をそっと支える人がいる。言わずと知れた私の旦那様なんだけど、ちょっと驚いた。私が身動きとれなくなっているのを見かねたのかな。

「雫さん、風が強いから、俺の後ろを歩きませんか?」
「う、うしろ?」
「背中にくっつくようにして進めば、雫さんは風を受けないかと思って。もちろん、雫さんさえよければだけど」
「じゃあ、遠慮なく!」
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