よくばりな恋 〜宝物〜
確かに。
でもその爽やかな貴公子然とした空斗にそぐわないと思ったのも事実で。
支払いが終わり、当然のように荷物を空斗が持ってくれる。
「しっ斯波さん、わたし自分で持ちますよ?」
横を歩く空斗に紅が必死で訴える。
空斗は何処吹く風といわんばかりに知らん顔をしていた。
「水沢さん、一人暮らし?」
「あ、はい。引越したばっかりで」
「そう、ほなデパ地下でご飯買って水沢さんち行こ」
「は?え?あの?」
空斗の荷物を持っていない方の手が伸びてきて紅の手を握り引っ張って歩く。
「嫌いなものあらへん?」
「あ、ないです!」
いや、そうやなくて!
デパ地下に行くと慣れた様子でサラダやチキン、オードブル、ワインをご機嫌で買う空斗を紅は呆然と眺める。
気が付くと2人で電車に乗って紅の最寄り駅に降り立っていた。
いいように振り回されている紅はまんまと自分のマンションの部屋に空斗を招き入れてしまう。
玄関のドアが閉まった途端、一旦荷物を床に置いた空斗に壁際に追い詰められた。