よくばりな恋 〜宝物〜
サラサラの染めたことなんてなさそうな黒髪。
眉の上で切り揃えられた前髪。黒縁メガネ。
飾らない言葉で意見を言う女の子。
自己紹介で『名前以外は地味です』と笑った素直そうな女の子。
勉強と実験ばっかりしてきた女子に免疫のない同期の理系男子の間で、紅は密かに人気があった。誰に対しても態度を変えないから。
空斗の前では可愛らしく振舞っても、所謂冴えないヤツらに対してはおざなりだったりするのが普通の女の子だから。
あの打ち上げの次の日、空斗は紅に嘘を吐いた。
ザワザワではない。
あのときには既に明らかな好意があった。
腕の中で泣き続ける紅を空斗は離さない。
ねえ、紅。
気付いてた?
誰にでも優しい空斗の紅にだけ与えた特権。
『甘やかすこと』
ドロドロに甘やかして、自分に堕ちてくるように。
「好きだ」と紅の口から言わせるようにーーーー。
日曜日、紅は空斗に手を引かれて豪邸の前に立っていた。ハッキリ言えば竦んでいた。
京都の高級住宅街、周りのどこを見回しても大きな家ばかり。その中でも一際空斗の家は大きかった。
「大きい・・・・・・」
「二世帯住宅やからやろ。いちばん上の兄貴家族が一緒に住んでるから」