よくばりな恋 〜宝物〜


紅は就職を機に一人暮らしを始めた。
1人いる兄は結婚して、仕事の都合で関東に住んでいるし、紅も手が離れたからと父親が早期退職をし、祖母が一人暮らしをしている田舎に母と引っ込んだからだ。



土曜日、紅は朝から部屋の片付けをし、ようやく荷物を入れたダンボールが消えた。1Kのそんなに広くない部屋だけど、荷物もほぼ収まってようやく落ち着いた気分になる。


あとはパソコンを買いに行かないと。


学生時代から使っていたものはOSが古く、会社で通信講座も始まるし思い切って買い替えることにしたからだ。


ポンっとスマホが軽快な音を鳴らす。
メッセージ受信のお知らせだ。


『もし暇なら今晩夕飯を一緒に食べない?』


相手の名前を見て驚く。
空斗だ。


昨夜の同期会から間を開けずのお誘いだな、みんな元気だなあと思うけれど、どうせパソコンを買いに行こうと思っていたし、明日もう1日休みもあるしと軽い気持ちでOKの返事をする。
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