よくばりな恋 〜宝物〜
『待ち合わせは京都と大阪、どっちがいい?』
『できれば大阪がいいです。これからパソコンを買いに行くので』
『パソコン買いに行くのも付き合うよ。大阪駅の御堂筋口改札で15時半ね』
みんなで自分に付き合ってくれるのだろうか。大きい買い物だから相談できる人がいるのは助かるけどーーーー紅はそんな風に考えていた。
待ち合わせ場所に着くまでは。
改札の前、遠目でも分かる人。
柱に背中を預け、スマホを見ている。
紺のカーディガン、白シャツ、ベージュのチノパン。
人混みの中、女の子たちがチラチラと視線を送るのを気にもしない。きっと慣れているのだろう。
スマホから顔を上げた空斗が紅に気付いた。
紅は綻ぶ笑顔に見惚れる。
ああ、もうこれは同じ次元で生きている人ではない。何故かそう思う。
「水沢さん」
「すいません、お待たせしましたか?でもみんなまだですよね?」
紅の問いかけに空斗が怪訝な顔をした。
「みんな?オレ、水沢さんしか誘ってないよ?」