よくばりな恋 〜宝物〜
「え?ひょっとしてわたしが何人か声をかけなダメでしたか?」
「なんで?」
なんで?
だってそれなら2人で出かけることになる。
事態がうまく頭で処理ができなくて混乱する。
「水沢さん、行くよ」
先に歩き始めた空斗の背中を慌てて追いかけると、くるりと振り向いた空斗がニッコリした。
心臓に悪い、と紅は思う。
簡単に誰でも笑顔ひとつで虜にする。
迷いもなく駅近の家電量販店へ空斗が入り、パソコン売り場まで紅を連れて行った。
「mac?windows?どっち?」
「あ、windowsが・・・」
「ほなこっち」
手招きされて行くと数えきれないほどのパソコン。紅は軽くパニックになる。
「スペックはどのくらい考えてる?動画とか音楽とか編集やるならこのくらいの・・・」
空斗が屈んで紅の顔を覗き込んだ。
そして吹き出し、笑い出す。
「・・・何にも分からへんって顔に書いてある」
分からないのはアナタもです!と若干涙目になりながら空斗を睨んだ。