【短編】チョコレートは恋の味
「寒っ。」


屋上は、とてつもなく寒かった。


太陽は出てるのに…。


ビュービューと、風の音がはっきり聞こえる。


コートとか、マフラーとか持ってくればよかった。


ただ今後悔中。


「ほんとにねー。」


羽柴も呑気にそんなことを言う。


・・・・全然寒そうには見えない。


なんかずるい。


「寒いなら、何でこんなとこにしたのさ。」


別に教室でも、と私が続けようとしたら。


「波奈ちゃんと二人きりになりたかったからに、決まってるじゃん。」


羽柴が、真剣な顔つきで言った。


・・・・え?


どくどくと、心臓の音が大きくなる。


え、え、え?


「は、はいチョコ。」


戸惑いを隠すように、私はあわててチョコを渡す。


なに、何この気持ち。


何でこんなに、どきどきしてるの・・・?


「ありがとう。わ、ほんとに手作りだ。」


「羽柴が言ったんでしょ。」


手作りがいいって。


私が作るなんて、想像できないかもしれないけど。


いや、想像できないなら変なこと要求しないでよ。


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