嘘ごと、愛して。
このまま見送るべきなのかもしれない。
けれどもしも今まで正義がくれた全ての言葉が本当なのであれば、正義はーー少しは、私のことを想ってくれているのだろうか。
ーー追いかけよう。
村山志真として、溢れる想いを伝えないと。
一生、後悔する。
駅までの道のりを全力で走る。
今日の正義の赤っぽい髪色は目立つはずだし、大柄な彼なら見つけやすい。
それでも駅に至るまでの道のりに正義の姿はなく、嫌な汗をかく。
ーーお揃いのクマのストラップをつけた携帯は、裕貴の部屋にある。
慌てて出てきてしまったことが悔やまれる。
今時、走って追いかけるなんてことよりも、電話をした方が確実なのに…
改札の中に入りたいが、お金も持っていない。
どうしよう。駅員さんに事情を話したら通してくれるのかな。
駅に着いたものの、改札付近の窓口に並ぶ外国人が道を塞いでいた。駅員さんは流暢な英語で受け答えしていて、まだ時間がかかりそうだった。
なんで!
いつもいつも、私のことを振り回すのよ!
いいわ!家まで、押し掛けてやるんだから!
晴人さんから合鍵を借りるのも良いかもしれない。
正義。
会いたいよ、馬鹿。
もっとゆっくりサヨナラしたって良かったじゃない!
急ぐ用事でもあったの?