初恋とチョコレートと花束と。

曖昧になってく心

「だから綾、ホントにさっきはごめんって」

「・・・」

「まさかあたしもこうなるとは思ってなかったというか・・・」

「・・・・・・」

「こ、今度家に遊びに来たときは美味しい紅茶とクッキー用意するから!ね!」

「・・・・・・・・・」

「あとは――」

「あー、もう!さっきからうるさいっ!!」

その日の帰り道。
私は今日もアリスと一緒に下校してた。

・・・と言っても、怒って先に帰ろうとした私をアリスが追いかけてきたのだけれど。


どうやら他の人達にもあの話を聞かれてたみたいで、うわさはすぐに学年中に広まった。
矢川くんと少し会話してるだけなのに、男子達に夫婦とかカップルとか言われて。
前の席の人になんて『クラスで一番似合ってる』って言われたんだから!

・・・まぁ、そんな感じで色々とあって。


そして帰りの会が終わった後、矢川くんがこんな事を言ってきた。

「しばらく話さないほうがいいかもね。ほら、理由は知らないけれどこのままだと色々言われるから」
そのあとすぐに「それじゃあまたね、山下さん」と言って彼は教室を出ていった。


矢川くんとはただのクラスメイトだから、別に話さなくなっても何も変わらないのに。
去年までの関係に、戻るだけなのに。


どうして、こんなに悲しいんだろう・・・。


それからしばらくして、私はアリスを待たずに帰ることにした。
結局、階段を降りてる途中にやって来たけれど。

「・・・ねぇ、アリス」

「な、何?」

小さく深呼吸をすると、矢川くんみたいに自分の思ってる事を全部アリスに向けて呟いた。

「さっきから聞いてたら、なんか食べ物のことしか言ってないよね。もしかして美味しいものをあげれば仲直りするとか思ってる?確かに私は甘いもの大好きだけれど、好きなものを用意したからと言って絶対にアリスを許すかどうかはわからないんだよ?」

それから振り向いて思いっきり叫ぶ。
「アリスなんてもう、親友じゃない!!」

叫んだあとにしまったと思っても、もう遅くて。

私は振り返ると、一言も喋らずにフリーズしてるアリスを残したまま逃げるように走り出した。

アリスがどうしたのか、少しだけ気になるけれど・・・。


そのまま走って帰ったからなのか、あっという間に家についた。
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