沈黙する記憶
ご飯もロクに食べていないのだろう。


「夏男、無理してない?」


「無理なんてしてないよ。杏を見つけ出すためだ」


「でも……夏男ボロボロじゃない……」


こんな状態になっているとは思わずに夏男の事を疑ってしまっていた自分が恥ずかしくなる。


やっぱり夏男は何も知らないんだ。


「僕はどうなってもいいんだよ」


夏男はそう言い、杏の写真を手に取った。


2年生の時修学旅行で撮ったものだ。


杏と夏男だけじゃなく、仲間たち全員が笑顔で写っている写真。


「僕は杏を信じてる。絶対に戻ってくるって……」


「あたしも、信じてるよ」


あたしはそう言い、力強く頷いたのだった。
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