沈黙する記憶
「千奈は後ろにいろ。俺が呼ぶから」


克矢がそう言い、夏男の家のチャイムを押した。


「はい。あら、みんな制服?」


出て来た夏男のお母さんが混乱したような表情を浮かべる。


「今日、急きょ登校になったんです。夏男は今学校に行ける状態かどうかわからなかったんで、連絡網は回さなかったんですけど……」


克矢がスラスラと嘘を並べる。


「あら、そうだったの? ちょっと待っててね、学校に行くかどうか聞いてくるから」
< 169 / 229 >

この作品をシェア

pagetop