沈黙する記憶
そう言えば、さやは夏男の事が好きだった。


だから余計にショックなんだろう。


「杏と夏男から、仕方がない。お似合いだから応援しようって、思ってたから……」


さやが呟くようにそう言った。


「そうだったんだ?」


あたしがさやに聞くと、由花が「そうなんだよ」と、頷いた。


さやがずっと悩んでいた時、由花がそばで支え、夏男と杏を応援できるようになったのだと言う。


「そっか、そうだったんだ……」


何も知らずにさやと由花の事を怪しんでいた自分が恥ずかしくなる。


みんな、本当に仲がいいんだ。


自分が傷ついても友達の幸せを願う事ができる、優しい人たちなんだ。


それが理解できたあたしは少しだけ嬉しくなって、ほほ笑んだのだった。
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