沈黙する記憶
仲間
当時の杏の服装に違和感を覚えたあたしは、昼から裕斗と合流していた。


夏男の両親が怪しいと言う見方をしている今、夏男を呼ぶことはできなかった。


しかし、約束場所に行ってみるといつものメンバーがいてあたしは目を丸くした。


「ごめん、昨日帰りに偶然克矢たちに会ってさ、隠し通せなかったんだ」


裕斗は申し訳なさそうにそう言った。


「あたしたち友達なのに、隠すとかないでしょ」


由花が少し怒ったように言う。


克矢たちは克矢たちで、昨日も杏を探しに行っていたようだ。


「ごめんね。ちょっと、色々あって……」


あたしは口ごもってそう言った。


誰彼問わず簡単に話せることじゃなかった。


杏が妊娠していると言う事は、杏自身の名誉にもかかわる。
< 90 / 229 >

この作品をシェア

pagetop