浮気の定理
チラッとレジにいる菊地さんを見ながらそう言った副店長は、まるでまた何か言われたら相談しにおいでと言ってくれてるようだった。



確かに苦手なタイプだと思っていただけに、頼もしい助っ人が出来たことは嬉しい。



だけどそれには敢えて触れずに、私はペコリとお辞儀をして、小さくありがとうございますとだけ答えた。



副店長が裏の事務所に歩いていくのを見送りながら、ドキドキする胸を押さえる。



久しぶりに女性として扱われたような気がした。



そんな気持ちをごまかすように、中断していたDVDのパッケージをハンディモップで順番に拭いていく。



時々、さっきのことを思い出して顔が緩んだけれど、そのたびにハッとしながら仕事に集中しなきゃと自分に言い聞かせていた。
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