浮気の定理
部屋に入るとドリップコーヒーのいい香りが鼻を掠める。



はい、とテーブルにカップを置いて、彼もまたソファーに座ってコーヒーを一口飲んだ。



「ありがとう、山本くんてマメだよね?」



にっこり微笑みながらそう言えば、彼は首を傾げてそうかな?と笑う。



その顔を見ながら、なかなかいい男なのに……と、残念に思った。



「……で?話ってなに?」



コーヒーカップをテーブルに置きながら、本来の目的を聞いてくる。



ちゃんとあれだけじゃないことを、覚えていてくれたことが、なんだか嬉しかった。
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