浮気の定理
「花、帰るよ~」



玄関先でそう言って、手早く花にレインコートを着せる。



少し寂しそうに母を振り返った花は、まだ遊び足りないといった顔をしたけれど、諦めたようにまた前を向いた。



玄関先に花を座らせ長靴を履かせる。



準備が終わり帰る頃になって、私は思い出したように鞄をまさぐった。



「はい、これ!バレンタインのチョコ。お父さんに渡しといて?」



そう言って渡したのは、夫のものと同様GODIVAの、こちらは4つ入りのチョコだった。



値段も勇のものより数段安いけど、年老いた父にはこのくらいの量がちょうどいい。
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