浮気の定理
コクンと唾を呑み込んだ。



ずっとここに立ってるわけにもいかない。



早くリビングに行って、謝らなくてはと思っているのに、足が鉛のように動かなかった。



「ママぁ~!」



全然入ってこない私を心配したのか花が私を呼びながら、玄関に戻ってくる。



それから手を引っ張られて、引きずられるようにようやくリビングに顔を出した。



「おかえり」



勇の声は穏やかだ。



だけど、それに反比例するように表情は冷たかった。



「遅くなって、ごめ……んなさい」



思わず声が上擦ってしまう。



まだ今は大丈夫だと思っていても、体が震えるのを止められなかった。
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