浮気の定理
「お~花、おかえり」



優しそうな声が、玄関まで響いた。



花が嬉しそうな声を上げてるのが聞こえる。



普通なら微笑ましい光景。



後から入っていって、ごめんねぇ?遅くなっちゃった!なんてペロリと舌でも出して、急いで食事の支度をすればいいのかもしれない。



でも、うちは事情が違っていた。



花に優しく接する声が聞こえれば聞こえるほど、私は恐怖に震えた。



――嵐の前の静けさ。



そんな言葉がぴったりくる。
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