浮気の定理
初めて日付が変わる頃に帰宅した雅人を起きて待っていた時。



彼は露骨に嫌な顔をした。



まるで顔を合わせたくないから遅く帰ったのにと言わんばかりの表情で。



「今度から遅くなることがあっても、寝てていいから」



どうにか取り繕ったように、それだけを言い残して彼は浴室へと行ってしまった。



――そっか、もう待つことも許されないんだ……



彼にわからないように先にベッドに入ると、私は声を押し殺して泣いた。



あの時、ちゃんと話していればこんな風にはならなかったんだろうか?
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