浮気の定理
桃子の場合②
あんなことがあってから、初めて出社した日のことだ。



あの男は満面の笑みを浮かべて、私に声をかけた。



「あ、おはよう!

木下さん、こないだは大丈夫でした?」



――大丈夫なわけないだろっ!



そう言いたいのを我慢してにっこりと笑いかける。



「水落くん、おはよう

心配してくれてありがとう

でも大丈夫、特に問題ないわ」



私はたっぷりの嫌味を込めて、挑戦的な態度でそう言った。



だけど相手はそんな嫌味に気付くほど頭の回る男じゃなかった。
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