浮気の定理
私の答えに何を勘違いしたのか、水落が顔を近づけてそっと耳打ちしてきた。



「大丈夫だったんなら、またよろしくね?」



「……っ!」



耳に残る水落の湿った息に悪寒が走る。



それと同時にこんな男に体を許したのかと思うと、悔しくて涙が出そうになった。



だけど、何か反応すれば相手が喜ぶような気がして、私は平静を装いながら答える。



「何の話?」



首を傾げていかにもわからないというような顔で水落を見た。



ニヤニヤしながらこちらを見ていた彼の顔が、瞬時に凍る。
< 38 / 730 >

この作品をシェア

pagetop