浮気の定理
「何、言ってんだよ

俺たちそういう仲だろ?」



焦ったように必死にそう詰め寄る彼を、ますます不思議そうに見つめながら、私は言った。



「えっと……どういう意味?

あ、帰りは送ってくれてありがとう

そのことかしら?」



あの事はあんたの妄想でしかないんだと、印象付けたかった。



私は何も知らない……



何もされてない……



あれはなかったこと。



そう自分自身にも暗示をかけて……



だって証拠なんかないんだから。



私がしらを切れば何も言えないはずだ。
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