浮気の定理
あの慰謝料は、私が雅人に提示した金額だった。



自分が浮気しといて、桃子を同罪にしただけでも腹が立つのに、それを理由に慰謝料を払わないなんて、絶対に許せなかった。



だからわざわざ店に出向いて言ってやったのだ。



慰謝料を払わないなら、裁判を起こしてもいいんだと。



最初は桃子だって同意したんだと、耳を貸さなかった雅人も、次々と突きつけられるカードにだんだん青ざめていく。



最後には、慰謝料は払うからこれ以上関わらないでくれと懇願された。



どう数えても月数の合わない妊娠は、桃子には伝えられていない。
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