浮気の定理
そのとき、エレベーターの扉が開いた。



――助かった!一階だ!



水落を押し退けて、エレベーターから走り去る。



水落がなにか叫んでいたけれど、そんなのお構いなしに走り続けた。



ビルを出て、駅へと急ぐ。



時々振り返りながら、水落が追いかけてこないかを確認した。



ハァハァハァハァ……



もう大丈夫だと確認すると、立ち止まり心臓を押さえながら、息を整える。



それからゆっくり体を起こした。



朦朧とする頭を振って覚醒させる。



大きく深呼吸をしてから、私は地下鉄に続く階段を重い足取りで降りていった。
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