浮気の定理
涙目になりながら必死に水落を睨み付けて、距離をとる。



肯定も否定も出来なかった。



写真をばらまかれたくもなかったし、目の前のいやらしい笑みを浮かべたこの男と、体の関係を持つのも嫌だった。



だから何も答えずただ睨み付けることが、せめてものささやかな抵抗だった。



「なぁ、わかってんだろ?もう観念しろよ」



だんだんと横柄になっていく男の態度が、そのまま私たちの上下関係に比例した。



以前は私の方が仕事も出来て立場は上だったというのに、明らかに今は形勢が逆転している。
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