浮気の定理
「あぁ……じゃあまたね?おやすみ」



「おやすみなさい」



もと来た道を戻っていく山本の背中を見つめながら、その姿が見えなくなるまで見送った。



それから気合いをいれて、玄関へと向かう。



さっきの電話での父の口調は厳しいものだった。



ずっといい子でいた私が初めて聞く父の声。



胸騒ぎを覚えながら覚悟を決める。



「ただいま~!」



わざと明るくそう言いながら、私はそっと玄関のドアを開けた。



次の瞬間――



気づいたら私は玄関のドアに肩を強打して倒れていた。



それが父に殴られたからなのだと理解するのに、しばらく時間がかかる。
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