浮気の定理
言葉には出さなかったけれど、私は父を思いきり睨み付けた。



「なんだ、その目は!言い訳があるなら言ってみなさい」



それだけ言うと、父は背を向けてリビングへと歩いていった。



血の味がする。



少し口の中を切ったかもしれない。



ゆっくり立ち上がると、のろのろと靴を脱いで、父の後を追った。



リビングのソファーにドサッと腰を下ろして待ち構える父は、眉間にシワを寄せて目を閉じて腕を組んでいる。



私は父の対面の床に、一応正座する形で座った。



「……」


「……」



しばらくそのまま沈黙が続く。



私は押し黙ったまま、父が口を開くのを待っていた。
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