浮気の定理
無邪気に喋る花と、それに優しく答える勇。



そんな姿を見ていると、ほんとに普通の仲のいい家族のような錯覚をおこす。



やはり壊したくないと思う瞬間だ。



「パパぁ」



「ん?なんだい?花」



「えっとね?ばじゃー行ってもいい?」



「花!」



涼子は思わず悲鳴のような声をあげた。



後で勇の機嫌を見計らって話してみるつもりだったのに、全て水の泡だ。



私の声に驚いた花は、ビクッと体をすくませている。



そんな私たちを怪訝そうに見比べながら、勇は苛立ったような声を出した。
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