浮気の定理
ドアが閉まりかけた時、急にまたドアが開いた。



不思議に思って顔をあげると、そこにはさっきのバーテンダーの彼。



若干、乱れた髪と、額の汗。



それだけで慌てて来たことが窺える。



「ちょっ、待っててって……ハァ……言ったのに」



息を整えながらそう言うと、さっさとエレベーターに乗り込んできた。



「私、約束した覚えないんですけど」



狭い密室に二人きりでいることに身を硬くしながら、強い口調で言い返す。




以前、水落にエレベーターで迫られたせいで、こういうシチュエーションにひどく緊張した。



「あのね?俺、そんなに悪い人じゃないよ?」
< 721 / 730 >

この作品をシェア

pagetop