神様お願い 僕を殺してください
そこに、神様の声が響いた。彼の頭のなかに、それはそれは大きな声で。
「彼女が幸せなのは、大好きな彼と一緒にいることじゃないのかい?」

全ての現実に打ちひしがれている彼の背中に、突如天使の羽根が現れた。
そしてまた、身体は半透明になり。病院の壁を抜けて。彼の意思とは関係なく、彼は空へとあがっていった。
「神様、どうしてそんなに残酷なんですか。僕はもうわかりました。全てわかったんです。だからもう、何も言わないでください!何も聞きたくないんです!」
自分の意思とは関係なく動く羽根を抑えようと、彼は空中でもがいた。今はもう、天使の羽根なんて必要ない。
それどころか、その羽根を今すぐもぎ取り。この大空から地上に向かって激突したいとすら思ったのだ。
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