3年後、あの約束の続き
「お父さんの研究も、あと3年で終わる。3年後、お父さんと伯母さんは帰国するんだ。伯母さんの旦那さんも既に亡くなっているからね。もう俺はノルウェーにいる意味がなくなるんだ」

はぁ、ともう1度大きなため息をついて、章は話を続ける。

「あんまり良い思い出はないけどね。それでも、俺はノルウェーに居たという証明が欲しかったし、ノルウェーに帰る場所を作れたらと思っていた。
それに、うちの会社で目立つものを作れば、いつかは君が来るんじゃないかと思っていた」

初めて聞く話ばかりだ。
章の切ない表情に、胸が痛む。

「えみ、俺は君をノルウェーに連れていくよ。もう離れている気はない。
確かに翔太とは離れることになる。それでも、俺を選んで欲しい」

章は出口に向かって歩き出して、ドアノブに手をかける。


「俺は10年間、君を探していたんだ。次こそ君を連れていくよ」

そう言うと1度だけ振り返り、まっすぐに私を見つめる。


「営業部に行ってくる」と呟くと、バタンとドアを開けて章は出ていった。
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