散る桜
26


わたしは赤い雨傘を投げ捨てて、彼に手を差し出した。彼は一瞬、驚いた表情をした。

雨に打たれたまま、わたしは微笑んだ。


「あなたが雨に打たれるというなら、わたしも傘なんていらないわ」


彼は、わたしの手を取って立ち上がり、肩を押した。


「もう、ここに来るな」

一言だけはっきりそう言って、忌地の白雨に消えた。
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