散る桜
25


それは、本当に雨だったのか。いくつもの水滴が、頬を伝って流れ落ちた。


彼は静かに泣いていたのかも知れない。


わたしたちを隔てる見えない壁に向かって、わたしは赤い雨傘を差し掛けた。


「赤は、苦手なんだ」と、彼は目をそらした。「赤はヒトの血の色だろう」


「でも、わたしの血を舐めるじゃない」

「しずかはヒトだろう。血が赤いのは当然だ。俺もしずかのようだったら良かったと、赤い色はそれを思い出させるから、嫌いだ」
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