散る桜
28


祖母は腰の手ぬぐいで、目尻をそっと押さえてから、二度三度、目を瞬いた。


「それと、ちゃんと帰ってきなさいね。おばあちゃん、おいしいご飯作って、しいちゃんが帰ってくるの、ずっと待ってるから」

「川では遊ばないし、ご飯までには戻るよ」

「おばあちゃん、心配なのよ。しいちゃんのこと。しいちゃんいつも、どこに行っているの?」


思い返すとそれは、祖母が初めて漏らした心の内だったような気がする。

忌地へ出かけるわたしの背中を見送りながら、祖母も不安だったのだろうと、今ならわかる。
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