散る桜
34


もうここには来るなと言った、彼の冷たい声が思い出された。

わたしはまた、大切なヒトを失おうとしている。


「しいちゃん」

わたしは黙って、祖母を睨んだ。


「しいちゃん、聞いて」

「聞きたくない」

わたしは祖母の手から、白いリボンの麦わら帽子を引ったくって、真夏の太陽が照りつける熱い空気の中に、飛び出した。
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