あなたを好きにならないための三箇条
〜〜〜

ツンとした匂いが充満している保健室


俺、一ノ瀬空は保健室のベッドに横たわる少女の隣にパイプ椅子を置き腰を下ろした。



はぁ、とため息をついて先程浴びた視線を思い出す

イケメン女子で有名な彼女をお姫様抱っこで連れてくるのには少々手間がかかった

何故なら
その状況を目にした老若男女皆が二度見しては声をかけられずそわそわしている
という中を通って来たからである。


放課後といえどクラス替えで舞い上がった生徒達は中々帰るそぶりを見せない

それとは対照的に早々に帰りたかったのだが、
彼女を倒れさせてしまった原因は俺だろうと残ることにした


目がさめるのを待つしかない時間。



俺はただ彼女を見つめていた。



太陽に透けるときらりと金色に輝く髪はポニーテールでまとめてある。

イケメンは短髪というイメージだったけれど
彼女のイケメン力なら短髪ではなく長髪だろうと素晴らしく格好が良い


ポニーテールは寝るのに痛いだろうからと髪を解いてやれば
彼女は「ん…」と小さく甘い声を出した。


ふとした瞬間に見せてくる女の顔


警戒心が強くて
漫画をもとにした“KA BE DO N”にも俺を睨むのみで
“キュン…ッ”とかいうフラグが立つことはなかった


男らしく振舞っているくせに
イケメンのくせに
本来の一人称が私だと知った時の驚きは隠せない

彼女は心から男になりたいわけではないのだと理解したから



開いた窓から光が差し込み風が入り込んで来た

ふわりとした春の香りを漂わせて
俺はふと視線を窓の外に向けた


木々が騒がしく揺れている



––––と、その時
彼女はまた
その声を発した



「……せんせい」



せんせい?
せん、せい…?

…先生…!?


その甘い声は優しく熱を持っていたように感じた

それでも彼女の眉間には深く眉間のシワが刻み込まれていて




「…なんなんだよ…。こいつ」




どっかの教師が好きなのか?
片思い、もしくはもうすでに付き合っている…?


「…くそっ」


–––これほど女のことを考えたのはいつぶりか。



はぁ、と俺は軽くため息をついて思った


だから女は嫌なんだ







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