秘密の会議は土曜日に
「……っ」


唇が押し当てられて、びっくりして横を向く。こんなこと仕事中にするようなことじゃないし、ここは鍵もかからない会議室なのに。


「静かに」


もう一度触れた唇の優しい感触に、思わず目を閉じた。今度は拒めなかった。


「……ぁ」


舌が重ねられて、痺れたように体が動かなくなる。体の内側からとろとろと蕩けるように撫でられて、背中に窓がなければ、立っていることすらできない。


こういうキスは研修会の夜にもしたけれど、あの時はお酒が入っていたし、私は少しもこんなことには馴れていない。仕事中に急にこんなキスをされたら、ドキドキしすぎて胸が苦しい。


「ん……はっ……」


ざあざあと雨が窓ガラスを打つ音と、時折、隣の部屋から事務的な商談の声が聞こえてくる。

いっぱいいっぱいになった私は、唇を離して柳さんを見上げた。


「駄目、まだ足りない」


今度はもっと深く絡めとられるようなキスに変わった。既に限界なのに高柳さんは少しも容赦がない。絶え絶えに息をしていたら、唇を軽く噛まれて膝から力が抜けた。


「……っ!」


高柳さんにもたれかかって、それでもやっとの思いで立っている。高柳さんが手をついた辺りの窓ガラスがうっすらと雲って、それが何故だか恥ずかしい。


その時、急に胸元が震えるのでびくっと身構える。高柳さんの携帯が鳴っていた。


「この続きは土曜に」


耳元でそれだけ言うと、高柳さんは私から離れて電話に出る。


「はい、高柳です。……わかった。これから向かう……」


高柳さんが会議室を出た後も、私はその場にぺたんと座り込んで、立ち上がることもできなかった。何もできずに鳴りやまない雨音をずっと聞いていた。
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