秘密の会議は土曜日に
「あのっ、これにはのっぴきならない事情がありましてっ。お見苦しくて申し訳ありません!」


何かの勧誘なのか、知らない人が話し掛けてくる。こういう人も含めて、男の人だというだけで怯える自分が情けない。


「それなら一緒に飲みに行こうよ。奢るからさー」


「おおお気遣い痛み入りますが、食事に飢えるほど生活に困っているわけではなくっ……ひぃっ。」


肩にその人の手が回されて、身を引こうにも避けられなくなった。悪いことに今は閣下に頂いた高いヒールの靴を履いているからまともに歩くことすらできない。


「お姉さん面白いね。

そんなに泣いて、食事じゃないなら何に飢えてるの?俺がどうにかしてあげようか。」



「ほどこしをなさりたいとするお志は崇高だと思いますが……ふぎゃっ。」


肩に回された手が腰から下に滑るように動かされて、ひどく悪寒がした。ご親切でやっているなら止めて欲しい。


「何そのうぶな反応。面白れー。」


怖い。嫌だ離して……と声に出せずに固く目を閉じると、近くに誰かが走ってくる靴音が聞こえる。



「直ぐにその手を離せ。彼女には先約がある。」


驚いたことに、閣下の声だった。低い声がりぃんと響いて、その方は「なんだよ」と手を退けてくれた。


「理緒!大丈夫か?」


「閣下……」


頬が閣下の肩に押し付けられている。強い圧力が体にかかっていて、それは閣下の腕が私を包んでいるからだった。

そうされると不思議とさっきまでの悪寒が溶けていき、気が緩んだように今さら体が震えてくる。


「何やってんだよ、ナンパなんかにいいように触られて。」


「閣下……あの方は勧誘の人かと思いきや、恐らく哀れな人間に食事などを恵もうとするボランティア的な方で。」


「そんなわけあるか、馬鹿」
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