秘密の会議は土曜日に
閣下にじとーっと睨まれて息が止まる。泊まり込みで仕事して、今は束の間の休憩中なんだから私なんかと話をするのは嫌に違いない。


「閣……高柳さま、おおお疲れのところお邪魔して誠に申し訳ございませぬ。」


すると鴻上くんが横からぺしっと頭を叩く。



「緊張し過ぎなんだよ。あと『高柳さま』じゃなくて『高柳さん』な。話すときにはフツーは様付けで呼ばないから。」


「そうなの!?」


お客様なので『様』を付けて呼ぶのが正しいと思いきや、会社が違っても『さん』付けで呼ぶのが一般的らしい。


高柳さま、じゃなくて、高柳さん


土曜日には……宗一郎さん


言われてみればその方がずっと呼びやすい。


「ありがとう!今いろんな問題が解決した!」


「随分底の浅い問題抱えてんなー……。

あ、待て待て。お前みたいな奴が白い服で担々麺なんか食ったら絶対汁飛ばすぞ。背中こっち向けろ。」


言われた通り上体を捻ると、ロングカーデをするっと引き抜かれる。中に着ているワンピースは背中がV字型にカットされているので、首筋が少しひんやりした。


「ありがと」


「お、おう。」




「……二人は、知り合い?」


ずっと黙っていた閣下……改め高柳さんが、静かに口を開く。


「鴻上くんは中学の同級生であり、人生の恩人でもありますっ!」


「恩人?」


高柳さんと鴻上くんが口を揃えて不思議そうに呟いた。


鴻上くんがかつて嘘の告白をしてくれたから、私は世の中の男性が決して私を好きになることはないと学ぶことができた。

これまで、恋などにうつつを抜かすことなく平穏に生きてこれたのは、間違いなく鴻上くんのおかげ。


「はっ。鴻上くんには、中学生にして男性というものを教えて頂いた深いご恩があります!」
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