秘密の会議は土曜日に
その後のことはしばらく記憶が途切れている。


私の人生を支えてきた信念が誤解だったと知って、コペルニクス的転換を求められた頭はずっとフリーズしていた。


あの後は閣下の……じゃなくて高柳さんの声を聞いたっけ?何も言ってなかったけ?……覚えていない。


気がつけばエレベーターで高柳さんと別れ、鴻上くんと私は3階のフロアまで降りる途中だった。


鴻上くんの告白は嘘でも冗談でも罰ゲームでも無かった。

……だからといって今の生活が何か変わるわけじゃないけど、でもその事実を飲み下すには時間がかかる。


世の中に私を好きになる変人がいたんだなぁ……。



『すきです』


唐突に頭に浮かんだ言葉に首を捻る。鴻上くんの告白の言葉とは違った気がするんだけど……




「お前の爆弾発言のせいで高柳さんと全然話せなかったろーが。」


「それはめんぼくない」


「ま、良いけどさ……。

キハズカシイついでに聞くけど、田中は今フリーなの?」


「いや私はフリーランスではなくメルトン情報産業の会社員で、」


「知ってるよ。相変わらずズレてんなー。フリーかどうかっていうのは彼氏がいるかって話。」


「私にそんな人いるわけないよ、見ればわかるでしょう。」


「見てわかるかそんなん!

……それなら今度飲み行こーぜ。想い出話の甘酸っぱさに悶絶する酒ってどうよ?」


輝くような明るい笑顔は、中学生の頃の鴻上くんと変わらない。子どもの頃の自分にこの笑顔を見せてあげたら、どれだけ喜ぶだろう。


「あ、何ニヤニヤしてんだよ田中。そんなに嬉しいか。意外なとこで可愛いげのある奴だなー。」
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