秘密の会議は土曜日に
デスクに戻ると、落ち着かない気持ちを追いやって仕事に切り替えた。

今日は木曜なのに、週明け早々に必要になるプレゼン資料がまだ着手できていないのだ。早めに準備しておかないと、要領の悪い私は直前になって絶対慌てることになる。


オフィスは空調が効いていて暑いくらいなのでカーディガンは脱いだまま椅子にかけておいた。少し涼しいくらいが、仕事するにはちょうど良い。



「鴻上くん、過去のテストデータはどこにあるんだっけ。ファイルサーバに見当たらなくて。」


「古いものは27階の資料室にバックアップメディアを保存してるよ。そのカードキーで入れるけど、行ったことないなら連れてってやるよ。」


「ありがと。大丈夫」


首に下げたIDカードでエヴァーグリーン内の殆どの施設に入れるようになっているので、鴻上くんの仕事を邪魔してまでついて来て貰うのは申し訳ない。


そう思って一人資料室に向かい、急いで目的の資料を探してみるけれど、図書館のように本棚が並んでいるのでなかなか見つからない。


「……やっぱり鴻上くんについてきて貰えば良かったかな。過去の計表解析データどこにあるんだろ。」



「それなら、ここ」


低くよく通る声がして、頭上の棚にさっと伸びる手が見えた。


「ありがとうございます……ひぃっ」


その手が高柳さんだというのは声を聞いてわかっていたんだけど、私を見下ろす顔はこれまで見たこと無いくらいご機嫌ナナメ感が満載だ。


眼鏡の奧からでも瞳の存在感は消えず、会社に泊まったとは思えないくらい、瞳の白い部分が澄んでいてきれい。

そう、今は不思議と黒目より瞳の白さが際立って、視線で物を凍らせる機能でもあるのかと思うくらい冷気を感じる。


「髪を切って、たった五日でこうも変わるものか?

やっぱり理緒を縛る檻は壊さなければ良かったな。」
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