クリスタルガラスは壊れない
どうしてこうなった、とは常々思っているけれど。
私こと原田翔子は、俗に言う腐女子である。
BLを嗜み、ボーイズラブを愛し、視界に男の子が2人入ろうもんなら、それは現実世界におけるカップリングなのだ。
脳内においてすぐさま受けと攻めが割り振られ、彼らのめくるめく甘いストーリーが展開される。それを愉しむ…それが私。
なんなら活字の世界だけでもカップリングを構築する。それが私、原田翔子だ。
まさに、今も目の前でクラスメイトの男子が3人、仲良くイチャコラしてくれているのを、席に着いて傍観している。
「翔子さん翔子さん。人の話聞いてます?」
「うんごめん聞いてない。むしろなぜ君は私を彼女にしたんだい、ハルキング」
「卒業式の後、翔子に告ったからかな。本人了承済み」
「デシタネー!」
そうだ。
あの小雪舞う日、私は彼からの告白を了承した。なんなら彼は幼馴染で、家もご近所で、入学した高校までも一緒。これはラノベか、それとも少女漫画か。
「好きです!」
長年の付き合いだというのに、敬語で、顔を真っ赤にして告白してきた彼の名前は、池園春樹。
彼は、春樹は、なぜ私を好きだと言ってくれたのか…それは、お付き合い半年が経った今でも謎のまま。
「謎が謎を呼ぶミステリー…」
「え?」
「なんでもなーい。で、なんのお話してたの?」
私はクラスメイトに向けていた視線を、横に立つ春樹へと移した。彼は高校生になってから髪を伸ばし始めたのだけど、これは…
「受」
「話聞いてるか翔子氏。次の日曜にお前ん家と俺ん家で出かけようって話なんだけど! あと俺は受けじゃないから!」
「うむ、分かった。お母さん同士で決めたならしかたない、行きます」
原田翔子、未だにカレカノがわかりません。