仮面のシンデレラ

(…?)


ぎこちない様子のチェシャに違和感を覚えたが、彼は何も語ろうとせずにクッキーを食べている。

心を開いてくれたと言っても、まだ私に言えないことがあるのだろうか。


(…そろそろ、“同志”の条件としてウサギさんの情報をオズに流さなきゃいけないけど…。ウサギさんに会えないんじゃ情報の仕入れようがないよ。)


ぱくり、とクッキーを食べながら、ぼんやりとウサギさんの顔を思い浮かべる。

…と、その時だった。


ざわざわざわ…


なにやら、騒がしい声が聞こえてくる。

ふいっ、と声のする方を見ると、広場に人だかりが出来ているようだ。


「…?チェシャ、何だろう?」


「さぁ…?ずいぶん人が集まってるみたいだね。」


私にそう答えたチェシャと顔を見合わせ、すたすたと人だかりに歩み寄る。

そして、人の合間を縫うようにして中心部へひょい、と顔を出した、その時。

私とチェシャの視界に飛び込んだのは、予想だにしていなかった光景だった。


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