なれたなら。ーさよなら、私の大好きな人ー
誕生日のことがあってから深侑とはまともに話してない。
いつも一緒に歩いていた学校までの道も一人で歩いていたし、お昼も柊花と葵ちゃんと食べて、そこに深侑はやってこなかった。
顔を合わせるのは朝食と夕食の時くらい。
何度か声をかけようとしたけど、またいつもみたいになれば別れが辛くなると思うと声はかけられなかった。
これでいい。
これで私は心置きなく自分の居場所を探しに行ける。
柊花にあっちについたら連絡するねと言って、荷物をもって待っていてくれている翼くんのところへ向かう。
「…深侑くんにはいいの?」
「うん。ちゃんとお願いはしてあるから」
「……そう。じゃ、行こうか」
最後に深侑への思いを直接伝えられたなら、後悔することなく前に進めたのかな?
でも伝えたって深侑を困らせるだけかもしれないから。
だから私はこの後悔と罪を背負って歩いていくんだ。
じゃあね、深侑。
私は振り返ることなく駅に向かって歩き始めた。