なれたなら。ーさよなら、私の大好きな人ー
翼くんは缶コーヒーを片手に私の隣に座った。
私はそれを見届けて、しばらく両手暖めてからキャップを開けてお茶を飲む。
「電車来るまでまだ時間あるし、ゲームしよっか」
「……ゲーム?」
ゲームなんかしなさそうな翼くんからそう言われるとどう反応したらいいのか困ってしまった。
そんな私をお構いなしに翼くんは話を進めていく。
「僕の手のどちらかにこれから僕達が暮らすアパートの鍵が入ってます。
どっちに入ってるか当ててみて」
「え、あ、うん。分かった」
ゲームというからトランプとかしりとりとかかと思ってたのにまさかの複雑じゃない簡単なゲームで驚く。
翼くんは手を背中に隠して鍵をシャッフルしている。
しばらくシャッフルしてから拳を作った両手を私の前につきだした。
「さ、どっちに入ってるでしょうか?」
「えーっと……」
どっちも同じ大きさで全然分かんない。
あてずっぽうで私は翼くんの右手に触れた。