なれたなら。ーさよなら、私の大好きな人ー




「こっちだね?
さ、鍵は入ってるでしょうか」




翼くんはゆっくりと私が選んだ右手を開く。




そこには何も入っていなかった。



  
「残念。外れだね?」


「は、外れた……っ」




左右差がなくてどっちに鍵が入ってるなんて分からなかったからあてずっぽうだったけど、外れると悔しい。




もう一回やると言おうとしたら駅のホームに電車がやって来る音が鳴り響いた。




リベンジは電車の中で挑もうとすると、立ち上がった翼くんから放たれた言葉に体が固まった。




「外れた夏生ちゃんは東京には行けません」


「え……っ?じょ、冗談だよ、ね?」




冗談だと思いたくても、翼くんの目が真剣なものでとても冗談で言ってるようには見えなかった。




嘘。
だって東京に行こうって行ってくれたのは翼くんだよ?




ここまできて行けないなんて……




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